医療費控除とふるさと納税は併用可能です。
よく議論になる「医療費控除をするとふるさと納税の限度額が下がる」という点について、実務上でどの程度のインパクトがあるのか、具体的な数字を用いて整理します。
結論:限度額の減少幅は「控除額の2〜4.5%」
医療費控除を受けるとふるさと納税の限度額は下がりますが、その減少額は限定的です。
限度額減少額の目安 = 医療費控除額 × 約2〜4.5%
例えば、医療費控除額が20万円の場合、ふるさと納税の限度額減少は約4,000円〜9,000円程度に収まります。控除額に対して影響は数パーセントにとどまるため、制度の併用を躊躇するほどの金額ではありません。そもそも自分が対象になる条件については、医療費控除はいくらから得するのか年収別シミュレーションで確認できますが、基本的には限度額が下がる影響よりも、控除で得られるメリットの方が大幅に上回ります。
限度額が下がる仕組み
ふるさと納税の限度額(自己負担2,000円で済む上限)は、主に「住民税所得割額」の2割という計算式に基づいています。
- 医療費控除により「課税所得」が減少する
- 課税所得に連動して「住民税所得割額」が減少する
- 算出根拠となる住民税が下がるため、ふるさと納税の限度額も下がる
医療費控除は所得から差し引く「所得控除」であるため、税額計算の土台そのものが小さくなることが原因です。
年収別の影響シミュレーション
以下の条件で、年収ごとの限度額減少額を算出しました。
条件:医療費控除額 20万円(医療費30万円支出・所得200万円以上の場合)
| 年収(目安) | 適用される所得税率 | ふるさと納税限度額の減少額 |
| 400万円前後 | 10% | 約4,000円 |
| 600万円前後 | 20% | 約6,000円〜8,000円 |
| 900万円前後 | 23% | 約8,000円〜9,000円 |
高所得者ほど所得税率が高いため、住民税への影響度も相対的に高まり、減少幅が広がる傾向にあります。
実務上の注意点:自己負担が発生するライン
実務で最も注意すべきは「当初の限度額ギリギリまで寄附を済ませている場合」です。
- 本来の限度額:80,000円
- 医療費控除後の限度額:72,000円
このケースで80,000円の寄附を行った場合、差額の8,000円分は税控除の対象外となり、全額自己負担となります。医療費控除を適用する予定がある場合は、あらかじめ算出した限度額から1万円程度の余裕を持たせて寄附額を調整するのが安全策です。
ワンストップ特例制度の無効化
医療費控除を適用するために確定申告を行うと、それまで提出していたワンストップ特例申請はすべて無効となります。
確定申告の際には、以下の両方を必ず含めて申告する必要があります。
- 医療費控除
- 寄附金控除(ふるさと納税の全自治体分)
ワンストップ特例で申請済みだからと、確定申告時にふるさと納税の情報を漏らすと、寄附金控除が一切適用されなくなります。申告漏れを防ぐために、あらかじめ医療費控除に必要な書類のチェックリストを確認し、手元に書類を揃えておくのが実務上のポイントです。
併用時のトータル収支
「限度額が下がるなら併用しないほうがいいのか」という問いに対し、数字上の答えは「併用したほうが圧倒的に有利」となります。
医療費控除額20万円の場合の比較:
- 医療費控除による節税効果:約4万円〜6万円(所得税還付+住民税減額)
- ふるさと納税限度額の減少:約4,000円〜9,000円
ふるさと納税の限度額減少というマイナス分を、医療費控除による節税メリットが大幅に上回ります。
実務フローまとめ
失敗を防ぐための具体的な手順は以下の通りです。
- 1年間の医療費を合算し、医療費控除額を算出する
- 控除後の所得をベースに、ふるさと納税の限度額を再計算する
- 算出した限度額の範囲内で寄附額を決定する
- 確定申告(e-Taxなど)にて「医療費控除」と「寄附金控除」をあわせて申請する
最近はスマホで医療費控除のe-Tax申請を完結させる方法も整備されており、会社員でも自宅から短時間で手続きが可能です。
このフローに沿って進めれば、自己負担額を最小限に抑えつつ、両制度のメリットを最大化できます。なお、手続き後に気になる還付金がいつ振り込まれるかという時期の目安についても、e-Taxと紙申告の違いを含めて把握しておくと、その後の管理がスムーズになります。
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