この記事の内容
- 「ねんきん定期便」の裏にある、もう一つの強力な機能について
- 働けなくなった時の給与保障「傷病手当金」と、その後のロードマップ
- 残された妻はいつまで守られる?「遺族年金」の期間と金額の仕組み
- 共働き妻の「850万円の壁」と、給料との併給ルール
前回の記事で、これから定年までに払う社会保険料の総額に直面し、正直めまいがしました。 しかし冷静に中身を分解してみると、私たちが毎月給料から引かれているこの金額は、単なる「老後の積立」だけではありませんでした。
実は、「民間では到底入れないレベルの好条件な保険」の掛け金も含まれていたのです。 今回は、47歳の私が「これなら高い保険料も納得せざるを得ない」と結論づけた、2つの強力なセーフティネットについて整理します。
自分が倒れた時の盾「傷病手当金」
40代後半ともなれば、急な病気やメンタルの不調で長期離脱するリスクは他人事ではありません。 そんな時、私たちの生活を支えてくれるのが健康保険の「傷病手当金」です。
【傷病手当金とは】 病気やケガで会社を休み、給料が出ない時に支給されるお金。
- 期間: 通算で1年6ヶ月(休みと復帰を繰り返してもOK)
- 金額: 給料(標準報酬月額)の約3分の2
「給料の3分の2か、生活レベルを落とさないと厳しいな」と最初は思いました。しかし、ここには大きなメリットと、注意すべき「入金の遅れ」があります。
実際の「手取り」は悪くない
この手当金には所得税も住民税もかかりません。額面の3分の2ですが、手取りベースで考えると、働いていた時の8割近い金額が確保できる計算になります。 これは自営業(国民健康保険)にはない、会社員だけの特権です。
【重要】すぐには振り込まれない
ここが最大の盲点でした。給料が止まってすぐにお金が入るわけではありません。 医師の証明や会社の事務手続き、審査などを含めると、初回の入金まで「1ヶ月〜2ヶ月」かかるのが一般的です。
1年6ヶ月を過ぎたらどうなる?
「じゃあ、1年6ヶ月過ぎても治らなかったら終わり?」 という疑問も湧きますが、日本の公的保障は2段構えになっていました。
- 【〜1年6ヶ月】傷病手当金でカバー(短期の守り)
復職と休職を繰り返しても、通算で1年半まで使用可能。まずはここで治療に専念する。
- 【1年6ヶ月〜】障害年金へ切り替え(長期の守り)
障害が残った場合、会社員であれば「障害厚生年金」の対象に。障害の程度によっては配偶者の加算などもつく。
この「傷病手当金から障害年金へのリレー」が標準装備されているのは大きいです。 民間の就業不能保険を検討する際は、この「公的な1年半+αの守り」で足りない部分(例えば住宅ローンの返済分など)だけを補うのが合理的だと感じました。
家族に残す盾「遺族年金」の期間
次に、前回も少し触れた「遺族年金」。 これは私が死んだ後、残された妻と子どもに支払われるお金ですが、「いつからいつまで貰えるのか」を具体的に調べると、その手厚さに驚きました。
結論から言うと、「名目を変えながら、妻が死ぬまで一生続く」ように設計されています。
| 【子どもが18歳になるまで】 | 遺族基礎年金 + 遺族厚生年金 | 教育費など一番お金がかかる時期なので「2階建て」で満額支給される。 |
| 【子どもが18歳を超えて〜妻65歳まで】 | 【子どもが18歳を超えて〜妻65歳まで】遺族厚生年金 + 中高齢寡婦加算 | 基礎年金部分はなくなるが、代わりに「中高齢寡婦加算(年約61万円)」という補填がつく。 |
| 【妻65歳以降〜一生涯】 | 遺族厚生年金 + 妻自身の老齢基礎年金 | ここからは妻自身の年金とセットで受け取る形になる。 |
共働きの妻は貰えるのか?(850万円の壁)
我が家も含め、今は共働きが当たり前です。 「妻も正社員として働いていたら、遺族年金は貰えないのでは?」 という疑問について調べました。
結論は、「よほどの高年収(850万円以上)でない限り、妻が働いていても貰える」です。
① 年収850万円の基準(入り口の壁)
遺族年金を受け取る要件の一つに「生計維持関係」がありますが、これは「妻の年収が850万円未満」であれば認められます。 つまり、妻がバリバリ働いて年収600万円や700万円稼いでいても、夫の遺族年金は満額受給権が発生します。
② 給料と年金は「両取り」できる
ここが最大のポイントです。 老後の年金(老齢厚生年金)は、働いて給料が高いとカットされる仕組み(在職老齢年金)がありますが、遺族年金にはそれがありません。
- 妻の給料: そのまま全額もらえる。
- 夫の遺族年金: そのまま全額もらえる。

妻が自分の稼ぎで生活費を賄い、私の遺族年金をすべて貯蓄や教育費に回すことも可能ということ。共働き世帯こそ、この保障は「最強の保険」になりますね。
※妻が65歳になって「自分の老齢厚生年金」を受け取るようになると、遺族年金との調整(併給調整)が入りますが、現役世代の間は「完全な上乗せ」になります。
まとめ
今回の検証ログ
- 会社員は「傷病手当金」と「障害年金」の2段構えで守られており、手取りベースでは給与の約8割が保障される。
- 遺族年金は、子供の成長や妻の年齢に合わせて名目を変え、実質的に一生涯サポートが続く。
- 妻が働いていても(年収850万円未満なら)、給料+遺族年金のダブル受給が可能。
「税金高すぎ、手取り減りすぎ」と文句を言う前に、「すでに持っている盾」のスペックを正しく理解する。 そうすれば、重複している無駄な民間保険に入らずに済み、結果として「今使えるお金」を増やせます。
次回は、これらを踏まえた「出口戦略」について考えます。 「結局、何歳から受給するのが一番得なのか? 死ぬまでの総額シミュレーション」 自分の寿命という不確定要素とどう向き合うか、検証していきます。


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